2025/10/09 18:44

※このテキストは、2023年に書いたブログを加筆修正したものです。Yaoskep Yarnの原点となる考え方なので、ブログとしてこちらにも掲載します。

私はフリーランスとして独立する少し前から、どっぷりと編み物の世界にはまっています。29歳の頃に独立したので、2025年でちょうどフリーランス13年目。つまり、編み物歴もほぼ13年目になりました。

海外の英文パターンが入り口だった私にとっての編み物ワールド。
興味の赴くままに色々と手を広げた結果、編み物が仕事になったり、友達ができたり。今では原毛から糸を紡いだり、草木染めや化学染で好きな色の毛糸を染めたり、ただ”編む”だけでない世界にも足を踏み入れています。


好き、を超えた原動力は「手放したくない」という気持ち

原毛を洗って、糸を紡ぐ前。これが毛糸になり、セーターや帽子、靴下になる。

「羊が好き」
「毛糸が好き」

など、自分のモチベーションの原動力になっている要素はたくさんあるけれど、結局最後に残るのは自分が生きる上で大切なものを手放したくない」という気持ちです。

ーー糸さえあれば、服が作れる。
ーー羊毛さえ手に入れば(綿花でも、他の獣毛でも可)、糸が作れる。
ーー庭木から、糸を好きな色にも染められる。

自分の手の中で、暮らしに必要なことを握っていられる安心感は、もしかしたら私の中でとても大きいのかもしれません。

たとえば、はじめて涸沢まで歩くと決めたとき。
パートナーと話していたのが、自分たちが持つサコッシュやスタッフバッグを作ろうということでした。夜寒いかもしれないから、帽子も軽くてしっかり温かいものが欲しいからメリノウールで編み、サコッシュやスタッフバッグはタイベックで手作り。


すでにある製品を買ってしまってもいいのだけど、自分で作れば万が一壊れても補修できるし、また作り直せるという気持ちが心の奥底にあるだけで、とても頼もしく感じていることに気づいて「そうそう、そうだよ」と思ったのです。


思い返せば人生の大切な選択はみんなそうだった

振り返ってみると、大学時代に農業に興味を持ったきっかけも、これに近しい気持ちからでした。卒論を書くために、とある農場に農作業をお手伝いするのを条件に寝泊まりさせていただいていました。その時に感じたのが、食べるものが生まれる場所にいることの安心感。

就職を考えるとき、農業関連の事業に取り組む会社に入ったのも同じ思いからでした。

なんでも「買う」ことで解決策を見出してしまう、超消費社会の東京という土地が自分に合っていなかったこともあり、地方に出た後も根本的には作ることに対する尊敬の念と、それに近い場所にいたいという思いはずっと続いています。

ーーいつかは食べ物を作る畑を持ちたい
ーー住まいも、自分の手で手直ししながら暮らしたい

まだまだできていないこともたくさんあるけれど、これからの人生の選択の軸になっていくんだろうな。


毛糸を売るとしたら


さて、そんななか。
染色した毛糸を売ればいいんじゃないの?と編み物仲間や家族に背中を押してもらいやっと2025年7月にお店をオープンできました(本当に今でも夢の中にいるような気分です)。


今までも、細々とだけれどオーダーをいただいたニットを作ったりしていたけれど、毛糸を売ることがまさか現実になるとは、思いもしませんでした。

ダイヤーとして、手染め毛糸を売る。言葉にすれば簡単ですが、なかなか思ったような色が出ないなど失敗も数々。手染めだからこそ、工業糸のように大量生産をして、たくさん買ってもらうのではなく、自分がいいと思って染めている毛糸を、少しだけいいと思ってくださる方にお売りするーー。

そんなスタンスを大切にしたいと思っています。

結果的に、暮らしに直結する根っこの部分を自分も、そして毛糸を買ってくださった方も手放さずに済む暮らしができたら。Yaoskep Yarnの想いはここにあります。